2004年5月25日号
 

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農林抄 (論説/水産白書への論評)
 
   「日本漁業の衰退は生産者の「自己責任」か」
       (21世紀の水産を考える会代表理事 河井智康
 
 
 日本政府の出す「白書」であれば、まずは日本の実態をはっきりさせ、どこに問題があるかを指摘するのが第一の使命であろう。ところが、一読しても再読しても残念ながらそのことが感じ取れないのが2 0 0 3 年度の「水産白書」である。とりわけ「特集」が気になった。今年度の水産白書の特集は「世界の水産物需給と我が国の水産物消費の変化をめぐって」であり、それ自体は時宜にかなった良いテーマである。しかしその分析は全体としてE U とか北アメリカ(アメリカとカナダ)といったグループと日本との比較となっており、例えば世界の水産物貿易における輸入規模(金額)がほぼ3グループで同レベルかのような解説になっている。だが、・・・


焦 点 「国営諫早湾開門調査しないと表明」
 
 
 長崎県の国営諫早湾干拓事業をめぐり、有明海の環境悪化への影響を調べる潮受け堤防排水門の中・長期開門調査について、亀井善之農相は5月11日、閣議後会見で「中・長期開門により流入する海水が有明海のノリ漁を含めた漁業環境に新たな被害を及ぼす可能性があり、また排水門を開けて長い歳月を要して調査しても成果は必ずしも明らかでない」と述べ、実施しないとの判断を明らかにした。これに代わる有明海再生案として、@有明海の環境変化の仕組みの更なる解明のための調査A有明海の環境改善を効果的に進めるための現地での対策の実証B調整池からの排水の抜本的な改善――を柱とした方策を提示した。



解説&論評 「2003年度水産白書」      (水産
 
   「中国『養殖』が世界を救う」
       週刊農林編集部 
 
 
 <概説> 2003年「水産の動向に関する年次白書」が4月23日、閣議決定された。今白書では、昨年1年間の水産に関わる動向をトピックスとしてまとめ、@便宜置籍船対策として昨年11月から開始した「マグロ類の正規許可船リスト対策」A霞ヶ浦・北浦で発生した「コイヘルペスウイルス病の発生」B世界で初めて成功した「シラスウナギの人工生産」Cバイオマス・ニッポン総合戦略の取組みDWTO新ラウンド交渉「カンクン閣僚会議の結果」を簡易にまとめ、振り返っている。また特集では、「世界の水産物需給とわが国の水産物消費の変化をめぐって」と題し、世界の水産物需給や水産物貿易の拡大と最近の特徴、わが国の水産物消費の変化と貿易等について取り上げ、「やや掘り下げた内容とした」(水産庁)。ただ、内容的には“やや”と表現するように、各種の数値データを示すにどまっているのは非常に残念である。水産資源に関する問題は食料安全保障と生態系保全という離反する大きな命題があり、危機的な魚種も少なくない。世界の水産物需給から大命題に向けた課題を洗いざらい浮き彫りにし、WTOをはじめとする国際会議の舞台で、わが国が取るべき確固たる姿勢を国民にアピールするよう白書を有効に活用する姿勢も必要である。人口増大に対応する食料安全保障の確立に向けて、FAOは生産現場の拡大が限界にある農業よりも、膨大な資源量を誇る「水産」に大きな期待を寄せている。しかし、世界の水産物需給は2010年には供給不足に陥るという展望にあり、現に海洋から生産される魚介類は90年代に入り頭打ちの状態で、水産資源の大部分はすでに上限まで利用されている。そこでFAOは「養殖」の増大に期待を寄せているが、そこで新たな救世主が現れた。「中国」である。中国の養殖生産量はすでにFAOが期待したすでに予測値を大きく上回り、2001年時点で世界の水産生産量の4分の1を占めるようになった。中国に対しては近年輸入量増加を主因に世界の食料危機を煽る論者もいるが、こと水産においては中国の食用水産物消費は淡水魚養殖の増大を背景に「自給自足」をほぼ達成している。中国の淡水養殖業が一大輸出産業になるかは嗜好の問題もあり微妙だが、大人口を抱える“大食漢”中国の腹を満たすだけでも、世界の食料・水産事情は大きく変ってくる。
 
   POINT解説
 
      海洋水産物供給は限界
      中国は水産物消費「自給自足」
      クジラ管理で食料安保を
      漁業経営の展望示せ
      付表・2001年 世界の水産物生産量(総生産量、養殖、捕獲・採集、海洋における漁獲量)


     
読み切り
 
連 載 「日本・アジアFTA農業交渉戦略構築への提言」       国際
 
   「日韓自由貿易協定における農林水産物の取扱い」<3>
       九州大学大学院教授 鈴木宣弘
 
      豚肉の輸出地図はどう塗り変るか−貿易転換の検証
      その他の留意すべき論点
         (1)日本農産物・食品にとっての市場としての韓国
      付表1・日韓豚肉(生体)1キロ当たりの生産費
      付表2・日韓及び日韓中FTAによる九州、韓国、中国生乳需給の変化
      付表3・日韓FTAに豚肉を含めた場合の貿易転換効果


     
つづく
 
トピックス 「農林水産物・食品輸出戦略の構築と展開」<2>
 
   「輸出本部、促進室設置し本格輸出へGo!」
       週刊農林編集部 
 
 

農林水産ニュース&解説

 
 食品・安全
    モンサント社がGM小麦研究開発を事実上撤退、消費者運動が大きく影響(5/10)
 米麦・水田
    農林水産物・食品輸出戦略の構築と展開<3> ジェトロがアジア4地域市場調査報告
 
畑作・果樹
    農水省が「適正農業規範(GAP)」スタンダード化を推進、各地で導入の議論活発化
 畜 産
    政府がBSE国際基準改正案に対する意見をOIE事務局に提出、リスク管理前提の無条件輸出反対(5/12)
 金融・農協
    介護保険見直しで軽度要介護者の利用排除、障害者福祉との統合に多くの団体が反対姿勢
 
構造・農村
    亀井農相が諌早湾中長期開門調査をしない意向を表明、3県漁連は代替案を拒否(5/11)
 
林 野
    環境NGO「気候ネットワーク」が温暖化対策大綱の算定基準を検証、根拠ない項目が多く杜撰さ浮き彫り(5/11)
 
水 産
    政府がワシントン条約第13回締約国会議に向け附属書改正等の我が国の姿勢を提出(5/10)