2004年6月5日号
 

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農林抄 (論説/食料・農業・農村白書への論評)
 
   「イノベーションの視点欠く白書」
        拓殖大学国際開発学部教授 叶 芳和
 
 
 農水省は現在、農政の中長期的な指針となる新たな「食料・農業・農村基本計画」の策定作業に入っている。新計画の目玉は、「プロ農家」の育成、支援である。従来の全農家一律助成というバラマキ型補助金行政を改め、支援をプロ農家に集中することで農業・農村の持続的発展をめざそうというものである。具体的には、品目別の補助金をやめ、意欲と能力のある担い手を対象とした「直接支払い」制度の導入が目論まれている。今回の白書はこの喫緊の課題にどう答えているであろうか。・・・


焦 点 「米国は「暫定清浄国」か?」
 
 
 日米BSE協議に係る専門家及び実務者会合が5月18〜19日開かれ、@BSEの定義・検査方法ASRMの定義と除去方法Bサーベイランスのあり方Cフィードバンのあり方を意見交換し、両国の現状を確認した。BSEカテゴリー区分の議論の中で、米国は「輸入牛のみの発生なので暫定清浄国である」と主張。これに対して、我が国の専門家が「フィードバンを7年間やっていない」と指摘したが、米国は「OIEコードでは7年となっているが、7年やる必要はない」と反論した。我が国が示した自己評価は「中リスク国」だった。ただ、カテゴリー基準は来年抜本的に見直されるため、いま当てはめても意味がないとの考えで一致した。



解説&論評 「2003年度 食料・農業・農村白書」      (農業政策
 
   「いまこそ食料自給率戦略構築を」
       週刊農林編集部 
 
 
 <概説> 政府が5月18日、閣議決定し、国会に提出した2003年度食料・農業・農村白書は、世界の農産物市場がアメリカ、ブラジルなど特定の国・地域が独占的な輸出シェアを占める偏頗な貿易構造となっており、世界の食料需給は、主要輸出国・地域の作柄変動による影響を受けやすく、中長期的に逼迫する可能性を孕む不安定な需給・価格構造にあると強調しているが、中長期どころでなく、いま現在、いつ73,74年に起ったような第2次食料危機、第3次石油ショックが起きるかもしれない需給、価格状勢にある。その大波乱要因が中国である。世界全体の消費量の2割、輸入量の3割を占める世界最大の輸入国にとなったことを背景に、昨年8月から国際価格が急騰、中国があわてて大量の買付けに走ったことから、5月には、73年以来の1ブッシェル10・50ドル(1ブッシェル)まで高騰しているのだ。白書も「今後予期せぬ相場変動が生じる可能性がある」と警告を発した。こうした中国を台風の目とする不安定な、危うい世界の食料需給・価格構造、貿易構造にあって、日本のカロリーベース食料自給率は、10年目標の45%に対し、4年連続40%で停滞、上昇に転じないばかりか、このままではさらに低下する恐れさえ孕む、さらに農業構造改革が遅れ、食料消費構造の変化に対応した品質・価格両面での国内市場競争力を強化できなかったことが大きい。食・農・村政策審議会は健康・食生活・国産農産物消費拡大戦略と、消費拡大に対応する米改革水田農業振興戦略など、農業生産政策改革生産拡大振興戦略を柱とする食料自給戦略を構築すべきである。食料自給率向上には、内需拡大に加え、外需拡大をめざした輸出戦略を構築し、展開することが重要だが、今年の白書は輸出について積極的な書きぶりに変わり、国産農段物が高級・高品質であるというイメージが定着しつつあるなど、「海外ニーズが高まっている」とし、市場開拓努力とともに、日本産ブランドイメージの確保に官民が一体となって取り組むよう力説してる。環境保全型農業については、エコファーマーの販売農家に占める割合がまだ1・7%で、JAS認定の有機農産物の国内生産量に占める割合も僅か0・15%に止まっている停滞要因を初めて分析したが、持続農業法に基づく支援措置が十分でないことについては言及していない。いまこそ国際化に対抗した日本農業の生き残り戦略、国土・環境安全保障として、資源循環・環境創造型農業の普及拡大に向けた有機農業振興戦略を構築すべきときである。
 
   POINT解説
 
      不安定な世界の需給、偏頗な貿易構造
      食糧危機再来か!? 台風の目「中国」
      計画見直しは自給率の徹底検証から始めよ
      ニッポンブランドに「海外ニーズ高まる」
      農地450万ヘクタール割れで危機的な国土安全保障
      環境創造型拡大へ有機農業振興戦略を


     
読み切り
 
 

農林水産ニュース&解説

 
 総 合
    JAグループが基本計画見直しへの基本的な考え示す組織討議資料を決定、直接支払導入めざす(5/13)
 食品・安全
    農水省がカドミウム、水銀など5有害物質対策で行動計画まとめる。アクリルアミドは初策定(5/21)
 米麦・水田
    農林水産物輸出戦略の構築と展開<4> JAグループ米輸出対策の概説
 
畑作・果樹
    全中が生産履歴記帳の信頼性確保向上へ「内部検査強化運動」を展開(5/13)
 畜 産
    OIEがBSE国際基準見直しを採決。特定危険部位を「腸全体」に拡大など(5/23〜28)
 金融・農協
    全中によると、県域改革に係るマスタープラン策定地域は過半数に。ただ、県域間の取組み格差広がる
 
構造・農村
    2010年に農地450万ヘクタール割れの恐れ。土地基盤整備し農用地区域編入促進を
 
林 野
    WTO非農産品交渉でクリティカル・マスの動向が焦点に。途上国は関税撤廃除外の可能性も(5/10〜12)
 
水 産
    遠洋水産研究所が蓄養マグロの現状と問題でレポート。蓄養クロマグロガイドライン早急な策定を提言