2004年9月15日号
 

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農林抄 (論説/2005年度農林水産予算への論評)
 
   「農林水産予算を考える」
       経済産業研究所上席研究員 山下一仁
 
 年総額確保?
本年度の農林水産予算が3兆円ギリギリだったため、関係者の間では来年度は3兆円維持できるかどうかが焦点だそうだ。農林水産予算は1960年度の1319億円から75年度には2兆円台に乗り、80年代以降3兆円台を確保している。しかし、農業の国内総生産は60年度の1.5兆円(経済全体の9%)から80年度6兆円(同2.4%)02年度には5兆3千億円(同1%)に低下した。60年度の農業予算は11倍の国内総生産を生んだのに、今日では1.8倍の国内総生産しか生まなくなっている。高い水準の農業予算を維持しても農業は衰退した。憂うのは乏しきではなく効果かもしれない。
総合性の欠如
 予算は各課からの要求の積上げである。各課が自分の予算の削減に抵抗すれば、省としての総合力を発揮できない。また、過去の予算との継続性もある。予算の抜本的見直しは言うは易く行うのは難しい。
戦前の農政の最大の目標は高額物納小作料に苦しむ小作人の解放だった。制度として低率金納小作料制を実現したのは第一次農地改革であったが、それ以前に食糧供出制度に低い地主米価と高い耕作者米価を設定し、事実上の低率金納小作料を実現した。農政は構造政策の実現に価格政策を使うという総合性を発揮した。8月の中間論点整理を受けて担い手の育成支援等に予算を拡充しようとしているが、米価維持のための生産調整への助成をそのままにしていたのではこれまでと同様効果は期待できない。(戦後ある時期までは構造政策担当部局は構造改革を阻害する米価引上げに抵抗した。)農地の基盤整備は私的な投資だがコストダウンを通じた農産物価格の低下により効果が消費者に帰属することが農業基盤整備事業を農家負担わずか10%の公共事業で行う根拠だった。その一方で農産物価格を下げないという生産調整に助成してきた。悲しいかな、こうした総合性の欠如による矛盾は容易には解決できない。・・・



焦 点 「BSE検査除外月齢示せず」
 
 
 食品安全委員会プリオン専門調査会は9月6日、国内のBSE対策を検証に関する中間とりまとめを行った。「たたき台」が示されて以降、全月齢の牛のSRM除去を行なえば検出限界以下の牛を検査から除外してもvCJDリスクは増加しないとの考えは終始一貫していたが、対象除外の範囲は最後まで揉めた。中間取りまとめでも当初、「20カ月齢以下の感染牛は現在の検出法で発見は困難」と示したが、委員から「まだ見つかってないだけ」など反論が相次いだことで削除、最終的には「20カ月齢以下のBSE感染牛を確認できなかったことは、今後のBSE対策を検討する上で考慮に入れる事実である」と遠回しな表現にとどまった。


特 集 「2005年度農林水産予算概算要求」
 
   概説「中間論点整理反映へ12%増3兆4212億円」
          週刊農林編集部
 
       177補助事業を7交付金に統合
       地域裁量広がる仕組みに転換
       担い手集中支援へ交付金643億円
       品目横断政策導入シミュレーションに1億円
       森林吸収源対策第2ステップへ2割増4118億円
       漁業経営改善・再建支援に9倍増36億円
 
 
特 集 「2005年度 農林水産主要新規施策の解説」  農業・環境政策
 
       消費者重視の食料供給・消費システム
 
「リスク管理型研究」によるリスク管理行政への調査研究結果の迅速な活用等/家畜の防疫体制等リスク管理・危機管理体制の強化/農産物のリスク管理・危機管理体制の強化/食品表示の適正化及び新たなニーズに対応したJAS規格の導入の推進/ユビキタス食の安全・安心システムの確立/国民運動としての食育活動の推進/健康・安心食生活創造対策
   
       構造改革加速化と環境・資源保全の両立
 
担い手育成支援策の拡充と多様な担い手の確保への支援/経営構造対策等の推進/新規就農者等の育成・確保/品目横断的政策の円滑な導入のための調査の実施/農地の利用集積の促進/総合的な遊休農地解消対策の推進/環境や農地・農業用水等の資源を適切に保全管理する施策体系の構築に向けた調査・検討/基幹水利施設等の既存ストックの有効活用の推進/中山間地域等における多面的機能の維持・増進/米政策改革関連施策の着実な推進
   
       未来志向の取組に対する積極的な支援
 
農林水産物の輸出促進/知的財産権の活用推進、人材・技術等の資源の有効活用による産地ブランドの確立/国際競争に打ち勝つ新技術の開発と成果普及の推進/農林水産分野の情報化と電子政府の実現/「守り」から「攻め」の産地形成に向けた生産面での取組強化/バイオマスの収集・変換・利用システムの構築、利活用の高度化等の促進/農山漁村における「地域自ら考え行動する」取組の促進
 
       森林・林業政策の展開
 
多様で健全な森林の整備・保全/川上・川下が一体となった森林資源循環システムの確立/国民参加の森林づくり等の推進/教育、IT活用等による消費者重視の木材・木質バイオマス利用の推進/緑の雇用等の担い手の定着促進と山村再生/いのちと水を守る緑の緊急保全対策の推進
 
       水産政策の展開
 
元気が出る水産業の確立/「海の恵み」の持続的な利用/有明海再生に向けた施策の推進/安全で安心な水産物の生産・供給基盤の整備等/多面的機能を発揮する水産業・漁村の支援