2005年7月25日号
 

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農林抄 (論説/農村地域再生・活性化戦略への提言)
 
   「農村の内発的発展と地域経営体支援」
       京都府立大学大学院農学研究科教授 宮崎 猛
 
 新たな食料・農業・農村基本計画では、「農村の振興に関する施策」として新しい農村振興政策が打ち出されている。その内容には、@農地や農業用水、豊かな自然、美しい景観、地域伝統文化等の地域資源の保全管理政策の構築、A中山間地域等直接支払制度の第2期対策として集落マスタープランの作成や担い手対策を盛り込んだこと、B生活環境の整備に地域裁量を重視する交付金制度の創設等の新味がみられる。その上で、新しい農村振興政策で注目したい点は、地域資源の保全管理、農村経済の活性化、都市と農村の共生・対流の主要な政策課題において、地域住民や都市住民も含めた多様な主体の参画、ならびに地域自ら考え行動するといった新しい観点が強調されていることである。・・・



焦 点 「WTO関税削減方式が前進」
 
 
 WTO非公式閣僚会合が7月12〜13日、中国で開かれた。農業分野では、日本やスイス等が関税引下げ幅を品目ごとに柔軟に決める「UR方式」と、米国等の農業輸出国が高関税品を大幅削減する「スイス方式」を主張し難航する中で、ブラジル、インドなど有力発展途上国グループ・G20が新たに「定率削減方式(リニア方式)」を提案した。これは関税率区分した階層内の品目を定率で削減するもので、さらに先進国の農産物輸入関税を最高100%、開発途上国は150%に制限する上限関税を設けるものだ。討議では幅広い支持を集め、議長総括で、このG20提案を「関税削減方式の議論の出発点とする」ことが明記された。



夏季特集 「農村元気戦略の研究」<1>          (季刊特集
 
   「農村地域再生・活性化戦略への提言」<1>
       明治大学名誉教授・全国グリーンツーリズム協議会長 井上和衛
 
      いま、なぜ農村地域再生・活性化戦略か
      EU(欧州連合)の農村開発政策(リーダー事業)に学ぶ
       (1)事業の内容
       (2)事業の特徴
       (3)事業の手法
       (4)事業の実施状況
      付表・新基本計画の「農村の振興に関する施策」

     
つづく
 
   「『農村振興施策』と農村地域再生・活性化」<1>
       農業ジャーナリスト・「地球的課題の実験村」共同代表 大野和興
 
      農業と村の乖離
      「多様な主体」のオンパレード
      中山間地域アンケートでわかったこと

     
つづく
 
   「農村地域再生の課題」
       東京大学大学院農学生命科学研究科助教授 小田切徳美
 
      「地域再生」と農村政策
      農山村の現状〜空洞化現象〜
      農村における地域再生の枠組み
      農村地域再生の実践課題

     
読み切り
 
   「EU農村振興政策と農村ガヴァナンス」<1>
      〜そこから学びえるもの〜
       茨城大学地域環境科学科長・大学院同専攻長(教授) 柏 雅之
 
      EU農村地域政策の意義とはなにか?
      ガヴァメントからガヴァナンスへの移行
      EU農村地域政策から学びえるもの〜日本農村の内的変革を〜

     
つづく
 
   「農村地域再生・活性化戦略」<1>
      〜鍵にぎる3つのキーコンセプト〜
       慶応大学大学院政策メディア研究科助教授 金谷年展
 
      地域競争力決定づける資源活用
      超効率バイオマス・エネシステム
      画期的なMCS技術を開発
      付表1・バイオマスの賦存量と利用状況
      付表2・各国のバイオマスエネルギーの利用率
      付表3・新たなバイオマス活用 MCS「多目的材料変換システム」

     
つづく
 
   「農村地域元気回復戦略」<1>
      〜農業自立と農村活性化の戦略〜
       拓殖大学教授・元国民経済研究協会理事長 叶 芳和
 
      農業の産業としての自立
       (1)市場開放と国内農業の共存策
       (2)規模拡大に向けて
       (3)四つの革命
       (4)イノベーション

     
つづく
 
   「農村振興政策の指導原理」<1>
       経済産業研究所上席研究員・農林水産省元地域振興課長 山下一仁
 
      何が目的で、何が問題なのか?
      地域振興政策が混乱する理由
      目的の明確化と序列化

     
つづく
 
 
編集室
 
 2005年夏季特集号企画の統一テーマは農村地域再生・活性化戦略『農村元気げんき戦略の研究』としました。昨年夏の夏季特集企画として立ち上げ、ご好評を頂きました『食料自給戦略の研究』を発展的に継承した『新たな「食料・農業・農村基本計画」と21世紀食料・農業・農村戦略の研究』の一環として企画特集するものです。
 日本の農村は、過疎化・高齢化の深刻化による耕作放棄地の増加、集落の衰退・崩壊で集落機能や多面的機能が低下するなど、構造的危機が深化し、農村地域に住む人々に元気がなくなり、地域の活力が失われつつあります。こうした中で、農村地域を再生・活性化し、元気にしていくためには、《どのような戦略目標を設定し、その実現のために、どのような戦略的政策を構想・立案し、戦略的な取り組みをしていくべきか》という戦略的命題を設定し、戦略を構築、展開していく必要があります。戦略の検討・研究、構築に当たっては、タタキ台として政府が3月に閣議決定した、新たな「食料・農業・農村基本計画」で打ち出した農村政策「農村の振興に関する施策」や次期中山間地域等直接支払制度等、政府政策を検証することに加え、優良かつ代表的なモデル的事例を研究するとともに、EUリーダープロジェクトなど、欧米の農村活性化政策と活性化モデルからも学び、これらを踏まえた産業政策としての農業政策と区別した農村地域政策として構想・構築する必要があります。その際には、新基本計画で構築し導入することになった「地域資源保全管理政策」に対する具体的な手法等の仕組みや次期中山間地域等直接支払制度の活用など、中山間地域の具体的な活性化戦略についても検討、構想していく必要があります。
 また21世紀の農村ビジョン、戦略目標として、「資源循環・環境創造型農村地域社会」の形成をめざす必要があります。地域に賦存する農地、水、バイオマス、豊かな自然環境、農耕景観、伝統文化、生物多様性等々の諸資源を発掘、再発見し、循環的に活用・保全・創造していくことにより、農業をはじめとする地域産業を発展させるとともに、新産業を興し、就業の場を創出し、豊かな自然環境と心豊かな生活の場を創出する農村地域社会です。バイオマスの利活用で電力や熱、燃料、堆肥等、地域で必要なエネルギーや生産資材、食料等を地域で生産し、利用していく循環的・自給的・自立的な環境・経済・社会を形成していく仕組みです。このシステム、枠組みの中で諸資源を活用したファーマーズマーケット、グリーン・ツーリズム、都市と農村の交流など、諸要素を組み合わせた政策や取り組みを立案し、取り組んでいくべきでしょう。もちろん、その主役、取り組み主体は、その地域に住む農業経営者、兼業農家、非農家、女性、高齢者など、さまざまな人々です。このため住民が集落等地域の将来ビジョンについて話し合い、計画を練り、共同出資し、協働し、新たに地域共同体を創出、再生することです。こうした地域の自立的な独自の個性ある取り組み、村づくり・村おこし、政策を立案、展開していくためには、国と地方との役割分担を明確化し、それにふさわしい権限・税源・財源移譲できる行政・税制・財政・補助金改革が必要です。
 こうした検討・研究視点、戦略的方向に立って、気鋭かつ多士済済の専門家、研究者から戦略的な構想をご提案いただきました。また事例研究として「地域再生・活性化戦略モデル」とも言い得る取り組み事例を探索・発掘し、紹介していきます。こうした刺激的な諸論考、イメージ豊かな構想や取り組みが地域再生・活性化の議論や政策・システム構築、取り組みへのきっかけ、弾みとなり、農村地域が再生・活性化し、地域の人々、農業者が元気になる一助となることを願うものです。

週刊農林編集部