2008年新春特集号
 

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農林抄 (論説/農村を元気にする新・農業マーケティング)
 
   「農林水産分野における知的財産戦略」
       農林水産省大臣官房参事官(知的財産担当) 松原明紀
 
 <書き出し> 我が国の農林水産物は、消費者の信頼に応えるべく、関係者の技術・努力を通じて新たな品種を産み出したり、品質の向上が実現されてきた。これらには他国に類を見ない特質や強さがあり、我が国農林水産業にとっての貴重な「知的財産」である。農林水産分野において、このような「知的財産」を継続的に生み出し(創造)、それを法的に守りつつ(保護)、経済的価値につなげ(活用)、農林水産業の競争力強化と農山漁村の活性化につなげていこうとするのが、平成19年3月に策定した「農林水産省知的財産戦略」(以下「戦略」という)の基本的考え方である。戦略策定後は、戦略に位置付けられた各施策の着実な実施と併せて、戦略の基本的考え方を更に発展させる施策を打ち出してきた。特に大きな進展が図られたのが、地域の人々の努力で産み出す「知的財産」として位置付けられる「地域ブランド」に関する施策である。・・・



焦 点 「農村振興は企業の社会的責任」
 
 
 農水省の農村振興政策推進基本方向研究会は12月17日、今後の農村振興政策の基本的方向を中間とりまとめした。今後5〜10年を見据えた農村振興政策として「集落間連携・都市との協働による自然との共生空間の構築」を提言。新たな展開として、限界集落など将来的な存続が危惧される集落に対し、@資源価値や集落維持コストを定量化し、施策の必要性と妥当性について国民の理解を得るA周辺集落との「相互扶助によるむらづくり」を促進B集落再編の場合に農地など地域資源取扱いのための法制度や技術面の対応――を求めた。また、農村振興を企業の社会的責任(CSR)の一環と位置づけ、農村との協働の可能性を探る必要性を示した。



新春特集 「農村を元気にする新・農業マーケティング」<1> 全8回の連載を予定(季刊特集
 
T 地域を活性化する新・農業マーケティング<総論>
 
   「あおもりを元気にする『攻めの農林水産業』の推進」<1> 
       青森県農林水産部総合販売戦略課長 小山内一男
 
      得意分野を伸ばす「攻めの農林水産業」の考え方
      専門部署「総合販売戦略課」の創設
      青森県総合販売戦略とキャッチフレーズ「決め手は、青森県産。」
      県産品のブランド化

     
つづく
 
   「農業マーケティングの前提となる基本的な環境認識」<1>
       江戸川大学社会学部教授
       藤澤流通・マーケティング研究所代表 藤澤研二
 
      効率至上主義による産地間低価格競争で地方疲弊
      農業再生の鍵は「小さな経済」
      図表1・「大きな経済」と「小さな経済」の対比
      図表2・価格競争から品質競争へ
      図表3・大手スーパーA社の収益構造

     
つづく
 
U 農林水産省の「農山漁村活性化戦略」と取組み
 
   「農山漁村の活性化について」
       農林水産省農村振興局農村政策課長 永嶋善隆
 
      みずほの国・防人(さきもり)応援隊
      活性化戦略の基本的考え方
      地方再生戦略への反映と戦略の概要
      地方の課題に応じた地方再生の取組み
      終わりに

     
読み切り
 
V 新・農業マーケティング〈地域内連携の構築〉
 
   「地域経営を組織化して地域の活性化」<1>
     〜地域経営の意義・役割とその経営戦略体系〜
       岩手大学農学部教授 木村伸男
 
      農業、地域産業、地方経済の衰退
      21世紀の地域セフテーネットの再構築
      地域セフテーネットとしての地域経営体
      地域、地域づくりと地域経営体
      地域経営とは、何か
      地域経営の戦略体系

     
つづく
 
   「フードシステム視点からの地域活性化戦略」<1>
      〜食料産業クラスターと地域ブランド〜
       千葉大学大学院園芸学研究科教授 斎藤 修
 
      課題の構図
      食農連携とクラスター形成
      公的セクターによる支援

     
つづく
 
W 新・農業マーケティング〈知的財産の活用〉
 
   「知的財産を活用した地域活性化マーケティング」<1>
       宇都宮大学知的財産センター長 山村正明
 
      今はプロパテントの時代
      知的創造サイクルのプレイヤー
      農林水産分野の状況
      図1・知的創造サイクル

     
つづく
 
X 新・農業マーケティング〈地域ブランドの展開〉
 
   「農産物のブランドについての取り組み」<1>
      〜ブランド化とは何か?〜
       (株)船井総合研究所戦略プロジェクト本部チーフコンサルタント
       アグリビジネス支援チーム  楠元武久
 
      「ブランド」という言葉の正体とは何か?
      その産地、生産者ならではの特徴をはっきりさせる事、それがブランド化の第一歩
      ブランド化に取組もうと思い立ったきっかけは、「うちの出荷価格は妥当なのか?」という農家の声

     
つづく
 
 
編集室
 
  「2008年新年号」企画特集の統一テーマは、『農村を元気にする新・農業マーケティング』としました。ご承知の通り、07年夏の参院選後、与野党挙げて「格差是正」を合い言葉に、我が国は『地方再生』へと動き始めました。政府の地域活性化統合本部(本部長・福田康夫首相)は11月30日に地域間格差の是正に向けた「地方再生戦略」を決定し、地域の自由な取組みを直接支援する「地方の元気再生事業」の創設を目玉に、地方を@地方都市A農山漁村B基礎的条件の厳しい集落に3分類して、再生への施策展開の方向を示しました。この戦略策定を受け、農林水産省は地方を活性化するとともに、地域住民が安心して暮らせる「農山漁村活性化戦略」を、経済産業省は地域経済が自立的に発展するための基盤を整備する「地方経済再生緊急施策プログラム」を作成しました。
 これまで農業では、農産物をいかにして販売促進していくかという『現物主義』によるマーケティングが論じられ、価格競争を繰り広げてきました。しかし、最近は農業分野におきましても「知的財産権化」や「地域ブランド化」等の促進、また新たな動きといたしまして、経済産業省と連携した「農商工連携」による地域経済活性化のための取組みが打ち出されています。すでに、知的財産権化や地域ブランド化、地域内連携による地域産業創出(農商工または食との連携)について積極的に取組まれた成功例もありますが、多くの事例が知的財産権化や地域ブランド化が最終目的となっており、マーケティングを培うまでに至っておりません。苦労して地域ブランド化して人気商品になったが、生産が追いつかず、かえって流通・消費者からの信頼を失ったという失敗例も見られるなど、「農業マーケティング」の脆弱さが改めて浮き彫りなっております。
 弊誌では、農業・農山漁村を再生する「地域ブランド」「知的財産」「地域内連携による地域産業創出」等の手法を農業・農山漁村『活性化ツール』と位置づけ、こうしたソフトをいかにマーケティングするかということを『新・農業マーケティング』と銘打ちました。農業マーケティングの潮流は、「売る」時代から、「応える」時代へと変化しています。いわゆる、ソフト重視の時代です。こうした活性化ツールをマーケティングすることによって農業活性化を図り、これを確実に農山漁村再生につなげてゆき、そして真の地方自立を成し遂げる「新・農業マーケティング戦略」という新たなマーケティング論の確立に向けて、研究者・専門家の方々にその総論的なグランドデザインと
ともに、各活性化ツールを活用した実践例の検証を通じて、様々な角度からご提案していただきました。
 ここに掲載いたしました諸論考が、「地域ブランド」「知的財産」「地域内連携におる地域産業創出」等の地域活性化ツールを活用した新・農業マーケティング戦略の構築や、農業振興・地方再生への一助となれば幸いです。
週刊農林編集長