2010年夏季特集号
(7月25日号)

 

  

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焦 点 「11年度予算編成始まる」
 
 
 民主党政権となって初の予算編成作業が始まった。10年度予算は概算要求が発表された後に政権交代となり、大胆な予算組替えは出来なかった。11年度予算ではこうした縛りがなくなり、民主党政権としての独自色を存分に出せるが、閣僚が一枚岩ではないところに、先の参議院選挙大敗やその後の菅首相の迷走ぶりで求心力が落ちていることが気がかりだ。財政再建論者に変節した菅首相は景気回復と緊縮予算の関係分析を急ぐべきで、志半ばにあった「コンクリートから人」の政治手法の景気浮揚効果を明らかにする必要がある。政治主導の御旗としていた「国家戦略局」構想を廃止したことで、予算編成の行方は首相の指導力次第になる。




農林抄 (論説/民主党農政1年の検証と提言)
 
   「大規模農家ほど所得補償歓迎」
       農業ジャーナリスト 大野和興
 
 参院選で民主党が大敗した。1人区で次々と議席を失ったことが大きかった。農村部を抱える1人区の票の動向は、農民票の動きと重なる部分が大きい。その意味で、今回の参院選の結果は、農民が民主党農政、なかんずく戸別所得補償制度をどうとらえているかをみるうえでのカギとなる。昨年の総選挙を経ての政権交代劇を主導した流れのひとつが農民票であったことはよく知られている。農協の政治組織である農政連推薦の自民党候補がほぼ全滅した。その前兆は2007年の参院選ですでにあらわれていた。1人区で自民党候補はほぼ全滅という結果に終わった。当時、生産者の手取り米価はどん底まで下がり、出荷すればするほど赤字という事態が発生していた。そこに民主党が戸別所得補償を引っ提げて参入、農民票をさらってしまった。政権交代の幕は、農民票の反乱から始まったのである。では今回の選挙結果をどうみるか。選挙直前の7月初旬、新潟、山形の米作地帯で何人かの大型稲作農家の話を聞いた。いずれも冷静に、まだ民主党農政は始まったばかり、早急に結論を出すのではなく、しばらくは見守りたいと語った。しかし選挙結果は冒頭に述べたようなことになった。いったいなぜなのか。・・・続きは本誌で




夏季特集 「「民主党農政1年の検証と提言」〈1〉連載企画 (季刊特集
 
  T 民主党農業政策の検証と提言
 
   「日本農業のアキレス腱」<1> 
      〜コメ余り、耕作放棄地の増大、後継者不足〜
       ユニパックグレイン株式会社代表取締役 茅野信行
 
    1.日本の穀物輸入の現状
      日本は成熟市場
      縮小する日本の輸入
      穀物メジャーの日本撤退
      怠け癖のついた日本

     
つづく
 
   「いま、農政の軸に据えること」<1>
       藤澤流通・マーケティング研究所代表 藤澤研二
 
      政治は新しい農業ビジョンを示せ!
      具体性に乏しい食料安全保障論
      どれだけの米を国内生産すればよいか
      米の輸出や新用途開発に政策を集中すべき
      改革のスピードアップを

     
つづく
 
   「日本農業の再構成」<1>
      〜構造政策の基本哲学〜
       日本大学生物資源学部教授 盛田清秀
 
      農業構造政策に欠けていたもの
      それでは構造政策をどうしたらよいのか
      民主党の戸別所得補償制度について

     
つづく
 
   「民主党農政と農政ビジョン」<1>
       東京大学大学院経済学研究科准教授 矢坂雅充
 
      民主党農政〜米政策の展望〜
        @施策の持続性
        A生産調整
        B価格形成
        C構造改革
        D先行した米戸別所得補償モデル事業

     
つづく
 
   「農業と政治」<1>
       キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 山下一仁
 
      我が国農政の特徴
      農政の動揺
      図表1:日本、アメリカ、EUの農業政策の比較

     
つづく
 
  U 民主党森林・林業政策の検証と提言
 
   「新政権の雇用対策や新成長戦略を射程外に置く『森林・林業再生プラン』」
       宇都宮大学名誉教授 笠原義人
 
      民主党における「森林・林業再生プラン」公表への検討経過
        @「森と里の再生プラン」
        A農山漁村再生法案
        B民主党政策「INDEX2009」
        C緊急雇用対策
        D新たな経済成長戦略
        E緑の分権改革
      民主党政策路線から逸脱した農林水産省「森林・林業の再生プラン」

     
つづく
 
  V 民主党水産政策の検証と提言
 
   「民主党水産政策への期待と懸念」<1>
       東京大学社会科学研究所教授 加瀬和俊
 
      はじめに
      従来政策への批判点を明確に
      財政支出についての考え方の転換を
      所得補償政策について

     
つづく
 
 
編集室
 
 「2010年夏季特集号」企画特集の統一テーマは、『民主党農政1年の検証と提言』としました。昨年7月21日の衆議院解散に伴う第45回衆議院議員総選挙で民主党が308議席を獲得、参議院では民主党単独では過半数に届かないため、社民、国民新の3党の連立政権を樹立しました。鳩山由紀夫・民主党代表が9月16日に召集された特別国会の首相指名選挙で第93代総理大臣に選出され、鳩山連立内閣が正式に発足しました。非自民政権が誕生したのは1993年の細川政権以来、16年ぶりで、野党が単独過半数を得て政権交代が実現したのは戦後初めてのことでした。
 不況が長期化する閉塞感から多くの国民が「国民の生活が第一。」「コンクリートから人へ」という斬新かつ新しい政治を期待して民主党を支持しました。これに加えて自民党の最大支持者であった農家の多くも、自民党の弱者切り捨ての農政を嫌い、政権奪取の目玉として民主党がマニフェストに掲げた「戸別農業所得補償制度」の導入を支持し、政権交代が実現しました。都市政党から、農村を包括した全国域の政党への変貌や、風まかせの選挙から組織に支えられた選挙へと地盤を固めるかに見えました。しかし、政権交代後には、閣僚の立場をわきまえない発言は、まるで政権末期のような状況を露呈し、竜頭蛇尾の政治的発言、自党批判など、組織政治としてあるまじき実態をさらけ出しました。政権奪取の御旗とした「国民の生活が第一。」「コンクリートから人へ」も腰砕けとなり、参議院選挙では早々に降ろしてしまいました。
 こうした国民の合意なき変節に対し、先の参議院選挙では国民の離心を招き、大敗しました。子ども手当は行き場がなくなり、このままでは戸別農業所得補償制度も二の舞にならないとは限りません。政権交代後初めての本格的な予算編成作業が始まりましたが、政治主導の象徴として設置した「国家戦略局」構想は格下げされ、シーリング方式を再導入する方針を示したものの、これも要求基準の骨子では省庁ごとの要求の上限額は盛り込めませんでした。今後、省益を守る¢蜷bらと財務省の綱引きが始まり、内閣不一致の言動がことさら強まることが予想されます。党側でも、「政策調査会」を復活させたことで発言圧力が強まり、三つ巴となる様相にありますが、参議院選の大敗で首相の求心力は落ちており、国民不在の混迷政治となることが予想されます。
 そこで、弊誌では『民主党農政1年の検証と提言』として議論を喚起するため、林野、水産の分野をご専門とされる研究者・専門家の方々も加えて、民主党農政の方向性やビジョンにつきまして分析いただき、農業の未来へのビジョン・戦略をご提案いただきました。わが国農業の再建に向けて、これまでの特集以上に忌憚のないご意見が集成いたしました。ここに掲載いたしました諸論考が、我が国農業の再生への一助となれば幸いです。

週刊農林編集部一同