2011年新春特集号
 

  

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農林抄 (論説/大麦・大豆増産による農村振興)
 
   「麦と大豆増産で集落再生を」
       政策研究大学院大学教授 松谷明彦
 
 高齢化が進み人口流入がないことから集落が激減している。農林水産省の見通しでは、2000年の13万5000から20年間で11万6000へと1万9000も集落が消滅するとされる。集落では、基幹産業である農業が持続的に営まれなければならない。それにはブランド化や農作物の加工などが一般的だが、利益率や農作物の質を高めていくのは付加価値率を高めているにすぎず、農業を振興していくためには付加価値の量的拡大が必要だ。付加価値の拡大には、野菜や果樹なども当然含まれるが、農業の根幹は穀物であり、稲は頭打ち状態であることから、麦・大豆の増産で農業振興を図っていくことが地方集落を維持していくうえで重要だ。・・・続きは本誌で



焦 点 「バイオマス基本計画を決定」
 
 
 政府は12月17日、「バイオマス活用推進基本計画」を閣議決定した。バイオマスの活用を促進する。バイオマス活用推進の目的について、@農山漁村の活性化A産業の発展及び国際競争力の強化B地球温暖化防止及び循環型社会の形成――を掲げた。2020年に国が達成すべき目標として、農村活性化では600市町村においてバイオマス活用推進計画を策定。産業創出ではバイオマスを活用する約5000億円規模の新産業を創出。地球温暖化防止では炭素量換算で2600万トンのバイオマスを活用する。とくに、バイオマス資源として「林地残材」を有効活用することを明記した。また、6次産業化を通じて新たな関連事業を創出する。



新年特集 「大麦・大豆増産による農村振興」<1> (季刊特集
 
 〔大麦・裸麦編〕
 
   「大麦でコレステロールを下げよう」<1> 
       大麦食品推進協議会会長 池上幸江
 
      免疫機能の向上にも期待
      高コレステロール者に麦飯効果
      図1 穀類の食物繊維含量
      図2 麦飯摂取による血中コレステロールの変化

     
つづく
 
   「オオムギで“皮麦”と“はだか麦”の違いはどのように決まるか? 」<1>
       岡山大学資源植物科学研究所教授 武田 真
 
      遺伝子単離の戦略
      皮性と裸性を決めるメカニズム
      皮性・裸性研究の展望

     
つづく
 
   「各地域の気象条件に適応した多収で良質な大麦・裸麦品種の育成」<1>
       農研機構・近畿中四国研究センター大麦・裸麦研究チーム長 柳澤 貴司
 
      日本は大麦を食用とする文化を持つ国の一つである。
      食用大麦の品種開
       (1)六条大麦
       (2)二条大麦
       (3)裸麦(六条)
       (4)二条裸麦
      表1 2000年度以降に品種登録出願された大麦・裸麦品種

     
つづく
 
   「高β−グルカン含有大麦「ビューファイバー」の育成と特性」<1>
       農研機構・作物研究所大麦研究関東サブチーム長 吉岡藤治
                 上席研究員 小前幸三
 
      国産大麦の生産状況
      大麦はβ−グルカンを豊富に含む穀物である
      β−グルカン高含有化に関与する遺伝子
      「ビューファイバー」の育成経過と特性および将来性
      図1「ビューファイバー」の機能性多糖含量
      写真1「ビューファイバー」とイチバンボシの比較
      写真2「ビューファイバー」の穀粒断面

     
つづく
 
 〔大豆編〕
 
   「大豆の安定生産に向けて」<1>
      〜土壌条件と新しい技術開発〜
       農研機構・中央農業総合研究センターダイズ生産安定研究チーム長 島田 信二
 
      大豆増収へ窒素施肥技術で
      継続した有機物投与が有効
      図1大豆の根粒
      図2地下水位制御による好適土壌水分の維持により、根粒窒素固定量は増加する
      図3田畑輪換の繰返しや長期畑転換に伴う乾土効果窒素の変化

     
つづく
 
   「大豆の新品種の育成方向」<1>
       農研機構・作物研究所大豆育種研究チーム長 羽鹿牧太
 
      最近育成された新品種とその特徴
       (1)豆腐用の新品種
       (2)煮豆・納豆用の新品種
       (3)既存品種のピンポイント改良品種

     
つづく
 
   「大麦・大豆増産で農村を元気に!」<1>
       東京農業大学国際食料情報学部教授 板垣啓四郎
 
      はじめに
      佐賀県白石町の事例
      岩手県北上市および雫石町の事例
      新潟県十日町市の事例

     
つづく
 
 
編集室
 
 「2011年新年号」企画特集の統一テーマは、『大麦・大豆増産による農村振興』としました。大麦・裸麦、大豆は、地ビールや焼酎、地域特産味噌など地域おこしの製品の原料としてのニーズも高まり、実需者ニーズに対応さえできれば大きな需要増につながる可能性を秘めております。大豆は健康食品として古くから食されてきましたが、大麦につきましても糖尿病改善効果が認められ、近年は病院食としての導入も進んでおります。しかし、小麦の自給率14%も低いですが、大麦・裸麦の自給率はさらに低く、9%しかありません。農研機構・作物研究所によりますと、大麦の主食用自給率は97%、味噌用も77%と非常に高いですが、最も大きな需要(21万トン)である焼酎用の自給率はわずか8%にすぎません。また、麦茶用も自給率が年々低下して60%を割り込みました。
 大麦・裸麦、大豆がニーズに十分に応じられない要因には、高品質な新品種の開発をはじめ、地域特性に応じた栽培技術が目標とするレベルには、まだまだ達していないからです。99年から実施された「麦新品種緊急開発プロジェクト」で、六条大麦では北陸地方の主力品種となる「ファイバースノウ」、わが国初のモチ性品種「セツゲンモチ」の2品種が育成されました。二条大麦では、大麦縞萎縮病の3つの系統に抵抗性を示す「スカイゴールデン」を育成。裸麦でも、整粒歩合が高く精麦品質の良い「マンテンボシ」が育成されましたが、これら新たな需要を見込んだ品種の早期育成と普及拡大は今後の大きな課題になります。用途別品種開発では焼酎醸造適性に優れるとともに、赤かび病抵抗性を一層強化した大麦系統の早期開発がまたれます。大豆では現在、低コストで質のよい加工・業務用農産物の安定供給技術の開発(加工業務用プロ)の研究が進められております。ここでは、@広域適応性を有し、コンバイン収穫適性に優れた豆腐・豆乳に適性のある品種及び有色大豆、特性のある大豆の育成A地域の気象、土壌条件に対応し、安定した品質・収量を支える技術の開発に取組まれており、10年度が最終年度となります。
 このように、大麦・裸麦、大豆ともに、用途別品種開発と地域特性に応じた生産性向上といった共通の課題を有しております。大麦におきましては「用途別加工適性に優れた新品種の育成」といった実需面からの対応が最大の課題になります。他方、大豆は土地利用型作物の中心として位置付けられ生産拡大に取組まれていますが、水田作大豆を含めた高品質安定化を目指した生産技術の確立が急がれます。今特集『大麦・大豆増産による農村振興』では、大麦・裸麦の新品種育成や多湿など高品質生産の阻害要因の除去、さらには安定的多収量生産に向けた新たな栽培技術の確立等を明らかにし、大麦・裸麦、大豆増産により農地利用率を向上するとともに、農村振興の重要なツールとなっている地域特産品ブランドの製造(いわゆる農業6次産業化)にまで寄与する『大麦・大豆増産戦略』の構築に向けまして、研究者や専門家の方々にご提案していただきました。ここに掲載いたしました諸論考が、農業振興・地方再生への一助となれば幸いです。

週刊農林編集部一同